妊孕性温存について考える

乳がんと妊孕性温存について

女性のがんの種類の中でも、乳がんは罹患数が多いことで知られています。

実際に、2010年のデータでは、女性のがん罹患数全体の約20%を占めているという報告がされていますし、

30歳代から40歳代の女性も多く罹患しており、2010年のデータでは、47899例のうち約5%が該当しました。

一方で、乳がん治療後の生存率が高いことから、治癒後のサバイバーシップやクォリティオブライフも重要視されてきました。

 

妊孕性の視点から見える若年性の乳がんの特徴


日本の乳がん検診は、40歳以上を対象としています。

最も乳がん患者の比率が高い年齢群である40-69歳での乳がん検診の受診率は34%程度といわれ

諸外国と比較しても低い水準です。アメリカでは80%が検診を受診しているともいわれます。

妊孕性と強く関連のある30歳代ということで見ると、約20%の受診率しかないのが実情です。

参照:日本医師会

検診の受診率が低いこともあり、若年期の乳がんの特徴としては、腫瘍径が大きく、リンパ節転移率も高い傾向にあります。

つまり、病期が進んだ状態で発見されることが多い特徴があります。

 

乳がんは、女性ホルモン依存性の疾患です。

具体的には、エストロゲン受容体(Estrogen Receptor:ER)、プロゲステロン受容体(Progesterone Receptor:PgR)、

がん遺伝子の1つであるHER2(Human Epidermal Reseptor2)発現とかかわっています。

エストロゲン受容体とプロゲステロン受容体が発現している場合には、

ホルモン療法が有効とされています。

HER2が発現している場合には、抗HER2療法が期待されます。

詳細は、がんの先生や団体のホームページをご確認ください。

 

これらのホルモン受容体ならびにHER2すべてが発現していないもの(陰性)を

トリプルネガティブ乳がんと呼ぶわけですが、発現していない以上はホルモン療法、抗HER2療法が効かないため、

一般的に予後が悪いとされています。

このトリプルネガティブ乳がんの比率が高いことも、若年性の乳がんの特徴とも言われます。

 

そうしたことから、若年性の乳がんでは、術前あるいは術後に化学療法を施行する例が大きくなるというわけです。

そのため、化学療法誘発の卵巣機能不全(Chemotherapy induced Amenorrhea:CIA)が危惧されます。

卵巣毒性がある代表的な抗がん剤は、シクロホスファミドというもので、乳がんに対する代表的な抗がん剤の組み合わせの

ほとんどに含まれているとされています。

そのため、化学療法開始前に、卵子凍結や受精卵凍結、卵巣凍結といった妊孕性温存療法が適応となることが多いのです。

 

一方で、ホルモン療法は5年、あるいは10年間行われるものですが、治療中の妊娠は避ける必要があるため、

妊娠の時期は遅れてしまいます。

現在は、晩婚化が進み、初婚年齢はおおよそ30歳とされています。

(内閣府 平成28年版少子化社会対策白書によれば、初産年齢は30.6歳といわれています。)

そこから5年、10年の期間は加齢に伴う妊孕性の低下が起こることが予想されるわけです。

 

もちろん、どんな時でも、がん治療の根治が優先されるべきことです。

不妊治療を行うにしても、安心して治療に取り組むために、

当院では乳がんのセルフチェックや検診を受けていただくことを推奨しています。

妊活ノート編集部

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