体外受精の採卵後、
「今回は空胞でした」
と説明されることがあります。
せっかく採卵をしたのに卵子が取れなかったと聞くと、とても不安になりますよね。
今回はこの空胞に関して解説します。
採卵はとても小さな卵子を回収する処置
採卵では卵巣にある卵胞という袋に針を刺して中の卵子を回収します。
卵胞の大きさはおよそ 2cm程度ありますが、
その中にある卵子は 約0.1mmほどしかありません。
しかも卵子は卵胞中で液体の中に浮いている状態です。
そのため、卵胞を穿刺して吸引しても
- 卵子が吸い残る
- 卵胞壁に付着している
- 吸引液の中に出てこない
といったことが起こり得ます。
このため採卵では穿刺した卵胞すべてから卵子が回収できるとは限りません。
空胞とは言いますが卵子が中に残った状態です。
実際、ARTラボの指標では
卵子回収率(retrieved oocytes / aspirated follicles)
は70〜80%程度が一般的な目安とされています。
(Vienna consensus on ART laboratory KPIs)
つまり、一定割合の卵胞から卵子が回収できないことは珍しくありません。
空胞には「偽」と「真」がある
近年、空胞は次の2つに分類されることが多くなっています。
偽の空胞(false empty follicle syndrome)
真の空胞(genuine empty follicle syndrome)
多くは「偽の空胞」
実際の臨床では、ほとんどが 偽の空胞 と考えられています。
これは
- 採卵の手技
- 薬剤の投与方法
- トリガーのタイミング
などによって卵子を回収できなかった状態です。
そのため次の採卵では
- 採卵手技の調整
- トリガーの種類の変更
- トリガーのタイミング調整
- トリガー回数の調整
などを行うことで、多くの場合卵子が回収できるようになります。
真の空胞は非常にまれ
一方で、薬剤投与が適切でも卵子が回収できない場合があります。
これが 真の空胞(genuine empty follicle syndrome) と呼ばれる状態です。
この場合は
- 卵胞内に卵子が存在しない
- 卵子が成熟過程で消失している
などの可能性が考えられますが原因はまだよくわかっていません。
ただしこの状態は
非常にまれであり、報告では
0.2〜0.6%程度とされています。
多くの場合は、採卵方法やトリガー方法を調整することで改善することが多いとされています。
まとめ
採卵で卵子が回収できない「空胞」と言われることがありますが、
- 卵子はとても小さく、吸い残りが起こり得る
- 多くは採卵手技やトリガーの調整で改善する
- 真の空胞は非常にまれ
と考えられています。
もし空胞だった場合でも、
次の採卵で改善するケースは少なくありません。
不安な場合は、ぜひ主治医と今後の方法について相談してみてください。